令和5年の戸籍法改正により、氏名の「振り仮名」も戸籍の記載事項になりました(戸籍法第13条第1項第2号)。施行は、令和7年5月頃を予定しているようです。
戸籍に記載している氏名に振り仮名をつける、ということは、当然に、「氏」と「名」のそれぞれに、振り仮名がつくことになります。私の氏名は、ごくごく一般的なものであるため、読み間違えられることは殆どありません。けれども、日本には、とても珍しい氏の方や、個性的な読み方をする名の方がいて、小学校の先生が生徒の名前の呼び方に困る姿は、容易に想像できます。
改正戸籍法第13条第2項は、次のように規定しています。
「前項第2号の読み方は、氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない。」
ここで、「一般に認められているもの」とは?
「名」に注目して考えてみると、漢字の読み方には、「名乗り訓」という、名前に限って使われる読み方があるそうです。NHKの朝ドラにも出てくる「寅子」を「ともこ」と読むのは、この「名乗り」として知られた読み方のようです。
改正法施行時に既に戸籍がある人は、原則、届出をすることで、振り仮名が記載されるようになるように読めるのですが、令和6年6月の時点では具体的なことは決まっていないようです。そして、届出の際、氏名の読み方として一般に認められるものでない読み方を用いる場合は、「読み方が通用していることを証する書面」(パスポート、預貯金通帳、健康保険証等)を併せて提出することになるとの案内を、法務省が出しています。https://www.moj.go.jp/MINJI/furigana/faq.html#q01
万一、パスポート、通帳、健康保険証には、普段使っている振り仮名とは別の読み方が記載されている人で、戸籍の振り仮名としては、普段使っているけれども珍しい読み方にて振り仮名の記載を希望する場合は、今から証拠作りをしておく必要がありそうです。
他方、新たに戸籍を作るケースとしては、出生の場合があります。この場合、「読み方が通用している」ことはないので、となると、一般に認められない振り仮名を名前に使うことはできなくなる、ということが予想されます。「名乗り訓」も現存するところまでになるのでしょうか。柔軟な対応を期待したいところです。
なお、既に戸籍がある人で、振り仮名として届出することができない振り仮名があるそうです。法務省が示している例として、次の3つがあります。
1.漢字の持つ意味とは反対の意味による読み方(例:高をヒクシ)
2.読み違い、書き違いかどうか判然としない読み方(例:太郎をジロウ、サブロウ)
3.漢字の意味や読み方との関連性をおよそ又は全く認めることができない読み方(例:太郎をジョージ、マイケル)
実際に日本全国を調べたら、戸籍係の窓口の方が悩むような事案は出てきそうな予感がします。上記3つの例では、「読み方が通用していることを証する書面」を提出しても届出することができないのか、となると、多少気になるところです。
題名に書いた名前は、どちらも、NHKの朝ドラに出てくる人物の名前ですが、上の3つの例からすると、頼安に「ライアン」と振り仮名をつけても、認められるように思います。本人が戸籍の名の振り仮名として「ヨリヤス」か「ライアン」かを自分で選ぶことができればそれで良いと思います。
そういえば、アメリカで、日本の戸籍について質問されたことがありました。日本人にとって戸籍は当たり前のように思える制度でも、アメリカでは非常に珍しい制度に思えるようです。
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